乳化剤とは字のごとく、乳化させる物質ということです。
乳化とは
「水と油のような非常に混ざりづらいもの同士を、均一に混合すること」
を言います。
乳化剤はこのような状態にさせるものということですね。
製パンにおいて乳化剤を使用することにより、パン生地の柔軟性、伸展性が高まります。
(水中油滴型と油中水滴型とか、エマルジョンとかややこしい話は省かせていただきます。生地中の水分が乳化によりしっかり生地中に留まっている状態というイメージが一番分かりやすいかと思います)
この効果により、パン生地の焼成時の窯伸び(膨らみ)が増し、よりふっくらしたパンが焼きあがります。
そして、パンの窯伸びが増すことで、パンの柔らかさも増します。
よりふっくら、ふんわり焼き上がるということですね。
また乳化剤は、パンを柔らかく焼き上げることに加えて、パンの老化を遅らせてくれます。
パンの老化とは、パンは焼きあがってから、時間が経つにつれて硬くなっていく現象のことです。
これは水分が空気中に飛んで行ってしまうことに加えて、パンの主成分であるでんぷんの性質によるものです。
「パンも生鮮食品である」という名言があるんですが、まったくその通り。
フランスパンなんて焼きあがってから、美味しさが保たれるのは4時間といわれているくらいですし。
冷凍など保管方法により、美味しさの延命はできますが、パンを美味しく食べる秘訣は焼き上がってから食べるまでに時間をあけないことです。
(ドイツパンや、サイズの大きいパンなどはまた話が違ってきて、そのためややこしくなるんですが、基本的には早く食べましょう。)
誤解を承知で言うと、乳化剤を添加することによってパンは間違いなく美味しくなります。
パンの性質状、それは疑いようもない事実です。
今の時代、「イーストフード、乳化剤不使用」のパンが飛ぶように売れている現状は正直どうなのかなぁと思ってしまいます。
安全性はしっかり証明されていますし、そもそも技術の進歩により、昔とは全然違います。
「イーストフード、乳化剤不使用」に越したことはないのかもしれませんが、完全オーガニックの天然酵母のパンでふっくら柔らかい口溶けのよいパンなんて存在しません。
やはりどうしても、「食品添加物は悪だ」という風潮にはどうしても納得できないし、違和感しかありませんね。
また「イーストフード、乳化剤不使用」でも美味しいパンを作るために、今は酵素が大活躍してます。
酵素とは、化学反応を触媒する機能を持つたんぱく質のことです。
乳化剤に代わるべく酵素剤の研究が非常に盛んに行われています。
酵素は高温で失活するため、原材料の表記義務がありません。